もしかしたらこれを読んでいる読者自身や、知り合いが片耳難聴を持っているかもしれません。片耳難聴はある研究*によると7%以上のアメリカ成人が持つと言われていて、珍しいものではありません。
この数字は実感より多いかと思います。周りに片耳難聴を持つ人がいない、という人がいるかもしれません。しかし、片耳難聴でないと思っていたあなたのご友人も、実は片耳難聴を持っているかもしれません。
というのも、片耳難聴が聞こえづらい人は両耳が正常に聞こえる人と同じように日常生活を普通に送っている場合が多いため、見た目では判断ができません。さらに、片耳難聴について周りにあまり言いたくないという人も少なくありません。親友に片耳難聴について打ち明けていないという人もいます。
まだ片耳難聴についてしっかり理解している人が少ないからかもしれません。
*Goman, A. M., & Lin, F. R. (2016). Prevalence of Hearing Loss by Severity in the United States. American journal of public health, 106(10), 1820–1822. https://doi.org/10.2105/AJPH.2016.303299
片耳が聞こえない人が持つ悩みの中で、一番大きいのは賑やかなところで会話を聞き取るのが難しいことです。パーティなどの社交場で、周りの人が何を言ったかを聞き取るのが大変です。片耳が聞こえない人は話しかけられたことに気づかず、結果的に無視してしまうこともあります。
これを防ぐために、片耳難聴を持つ人は聞こえる側の耳が全員を向くように端の席に座るなどの工夫をしています。しかし、これでも対策は完璧とは言えず、会話を聞き逃して、周りに申し訳ないと思いながら過ごす人も少なくありません。
片耳が聞こえない人は会話が聞き取りづらいのはなぜでしょうか?人間に耳が2つあるのは、以下のような理由があります。
左耳は左側の音を聞き取りやすく、右耳は右側の音を聞き取りやすいため、両耳あると広い範囲の音が聞き取れます。
音が小さいときは、両耳から入ってくる音が足し合わされてはっきり聞こえるようにあります。
音がどの方向から来たかがわかります。
脳が両耳から入る音を使って、雑音を減らして聞き取りたい音を強調します。
片耳が聞こえなくなるというのは、このような機能が部分的に、もしくは完全に失われるということなのです。片耳が聞こえないと、賑やかなところでの聞き取りが想像以上に難しくなります。
これら片耳難聴者の抱える問題に対する解決策はないのでしょうか。実はすでに存在はしています。中でも最も強力な解決策は補聴器です。
片耳難聴者向けの補聴器はCROS (Contralateral Routing Of Signals) 補聴器と呼ばれています。通常の補聴器は難聴の耳に届く音を拾い、それを増幅して耳に届けることで聞こえを改善します。一方CROS補聴器は難聴の耳に届く音を拾い、それを反対側の聴こえている耳の方で再生します。重度の片耳難聴の場合、通常の補聴器で音を増幅したとしても聴こえないのですが、CROS補聴器は機能している側の耳で難聴側の音を聴けるようにすることで問題を解決するのです。
CROS補聴器の欠点はその価格と見た目、そしてわずらわしさです。 CROS補聴器は通常の補聴器と同等かそれ以上に高価であり、数十万円するのが普通です。CROS補聴器の見た目は通常の補聴器と同じく🦻このような耳かけ型の見た目で、片耳難聴の方は補聴器なしでも音を聴くことができるからこそ、わざわざ見た目も気になる上に着脱も面倒なCROS補聴器を付けたがらないことが多いです。そこで私たちは、スタイリッシュで使いやすく、手ごろな解決策が必要だと考えました。これが私たちがasEarsを開発している理由です。